ガソリン1リットルで走れる距離は、何と291キロ。佐賀市高木瀬西3丁目の私立北陵高エコカー部が、燃費を競う九州大会の2人乗りで優勝した。燃費が悪くなるのは分かったうえで、見た目にこだわった「格好良さ」でも最優秀に輝いた。
作ったのは黄色いスポーツカー。でも普通の車とは違い、長さ2・9メートル弱、幅1・2メートル、高さも0・7メートル余りしかない。
タイヤも自転車を思わせるほど小さく細い。実際、後輪ブレーキは自転車の前ブレーキで、後輪を駆動するチェーンも自転車のもの。エンジンは、使わなくなった50ccバイクから取り外し改良。ハンドルもバイクのものだ。
軽量化のため、車体は繊維強化プラスチック(FRP)。厚いところでも1ミリほどしかなく、骨組みは細い鉄にした。
顧問の石橋祐史教諭(40)らによると、作り始めたのは2014年春で、今年8月に熊本県であった「Hondaエコマイレッジチャレンジ九州大会」に挑戦。5チームが参加した2人乗りクラスで、コースを3周、計約7キロを走って競い、北陵高は燃費291・247キロを記録して優勝した。
主催者によると、今年で第34回となった九州大会で、2人乗りでは最もいい記録。14年に同部が別の車で作った267・691キロも更新した。単純比較はできないが、燃費がいい市販車の代表的車種、トヨタ「プリウス」の燃費は最長40キロほどだ。
ドライバーの技術も成績を左右する。
16分40秒弱という制限時間があるため、燃費を気にして、ゆっくり走ってばかりはいられない。
運転した2年の福井優太さん(16)は、上りや下りといった状況に合わせアクセルのかけ方を工夫。助手席に座った3年で部長の松本真吾さん(18)と走り方を話し合いながらゴールをめざした。部員7人のうち残る1年の5人はコース脇でボードを示し助言した。
燃費向上には、車は風の抵抗を減らす流線形、卵形の方がいいが、あえて格好良さも追求。1人乗りも含め大会参加34チームの中で「グッドデザイン賞」にも輝いた。
もう1人の顧問、大坪和之教諭(59)は、歴代部員たちが積み重ねてきた工夫の結果とたたえる。優勝ドライバーとなった福井さんは「燃費300キロをめざしたい」と、さらに工夫を重ねて記録更新を狙っている。(祝迫勝之)