中年の童貞男とその母親、フィリピンからやって来た花嫁の3人の愛がからまり合って暴走する、ポストバブルの傑作漫画「愛(いと)しのアイリーン」が実写映画になった。吉田恵輔監督が約10年越しの熱望をかなえた映画化で、「愛の形を変化球で伝えたい」という。
原作漫画は、「宮本から君へ」などで知られる新井英樹が、1995~96年にビッグコミックスピリッツで連載した。後年、単行本化されたときの作者の後書きで、「バブリーな恋愛物にうつつを抜かす奴(やつ)らにテッテー的に嫌がらせをしてやろうってモチベーションで描き始めた」と打ち明けている、屈折しまくった癖の強い作品だ。
主人公の宍戸岩男は片田舎のパチンコ店に勤める42歳の独身男。恋愛とは縁がないと絶望し、フィリピンで見合いをした18歳のアイリーンと即決で結婚する。だが、ひとり息子の岩男を溺愛(できあい)する母ツルは怒り狂って猟銃を突きつける。居場所を失った岩男とアイリーンも互いに愛し方がわからなくなり、三つどもえの救いのない結末へ突き進む。
吉田監督は、最初に原作を漫画喫茶で一気読みしたとき、人目もはばからず大号泣したという。「とてつもなく心を打たれたのは、狂った猛烈な母性でした。あんな母親がいたら絶対嫌だけど、純粋な愛情だから否定できない。そこが結構、俺には響いたんです」
ツルは岩男を、岩男はアイリー…