沖縄出身の歌手・安室奈美恵さんのラストライブが開かれる3時間前の15日午後、ライブ会場から約9キロの沖縄県西原町のホールは500席が埋まり、立ち見が出ていた。
沖縄の昔ながらの言葉「しまくとぅば(島言葉)」に親しんでもらおうと、県文化協会が年に一度開く大会。地区予選を通過した7~78歳の20人が出場し、共通語の字幕もついた会場は笑いと指笛、拍手に包まれた。
昨秋から公民館で習い始めた南城市の仲村美里さん(23)は、伝統衣装の「琉装」で壇上へ。「沖縄(うちなー)ぬ歴史・文化 語てぃちなじいちゅる 人材んかいないぶさん」。沖縄の歴史や文化を語り継いでいく、と語った。
9月18日は「しまくとぅばの日」。島言葉を話せる人が少なくなった危機感から2006年、県条例で定められた。県は共通語と同じか、それ以上に使える人の割合を来年に40%とする目標も掲げる。ただ、16年度調査でも、島言葉が「よくわかる」と答えたのは70歳以上で71%だが、60代で43%、50代で17%、全体で18%にとどまる。
失われた背景には、特有の歴史がある。琉球王国だった沖縄は約140年前、明治政府の「琉球処分」で日本に組み込まれた。「皇民化教育」で標準語が徹底され、沖縄戦では島言葉を話し、スパイとみなされ殺害された住民もいる。学校では「方言札」を首から下げられるという懲罰が、戦後も続いた。
「ヤマト(本土)が上で、うちなー(沖縄)は下。そんな構造を押しつけられ、しまくとぅばに劣等感を抱いた世代は口にしなくなった」と、県しまくとぅば普及センターの照屋敏恵さん(60)は話す。
お年寄りから「話すなと言って…