鹿児島市の錦江湾公園に設置されていた「6m電波望遠鏡」が10月、国立天文台(東京都三鷹市)へ搬出された。宇宙のわずかな電波を観測し、活躍した望遠鏡は、およそ半世紀ぶりに誕生の地へ戻った。
国立天文台が1970年、敷地内に建設した日本初の本格的なミリ波望遠鏡。星の誕生や消滅する環境を宇宙から届く電波を観測して解明するものだ。岩手、長野を経て鹿児島大学に誘致され、93年に同公園に置かれた。オリオン星雲から出る水蒸気の異常な電波などを発見した。
2001年、鹿児島県薩摩川内市に最新型が置かれ、観測の役目を終えた。近年は同大の学生らが天体望遠鏡の仕組みを学ぶために使っていた。
分解されて10月1日に陸路で運ばれ、3日に到着。現在、組み立て作業中で、近く同天文台の敷地内で展示される。日本天文学会の「日本天文遺産」への登録申請も済ませた。
誘致に携わった同大大学院の面高俊宏・特任教授(電波天文学)は「日本の天文学の地位を押し上げ、地方大学でも最先端の研究ができると示した望遠鏡。その歴史を後世に伝えてほしい」と話した。(井東礁)