自治体によっては毎年のべ数百時間も費やす保育施設の入所選考。家族構成や親の働き方など各家庭で事情が違い、要望も複雑に絡む選考に人工知能(AI)を活用しようという動きがある。AIにかかると短時間で完了し、省いた時間で、別の市民サービスにつなげられる可能性もある。
「AIで延べ600時間分の業務が削れる」。保育施設の入所選考で、AI活用に踏み切った高松市の中谷厚之・こども園運営課長は、そう見積もる。
例年、職員4人が1月下旬から約1カ月かかりっきりで選考してきた。深夜まで残業の日も珍しくない。来年度は入所を希望する0~5歳児約2300人を約100の保育施設に割り振る選考にAIを活用。割り振りは数秒で終わり、作業の大幅削減が期待できる。
IoT(モノのインターネット)を使って地域の課題の解決をめざす総務省の事業に選ばれ、AI導入に必要な経費約1460万円は全額補助される。
滋賀県草津市も同省の補助を受け、約1千人の入所希望者の選考をAIで行う。職員2人で2カ月間、延べ800時間かけてきた作業が解消されるという。導入経費約520万円を含む一般会計補正予算案は2日の市議会で可決された。
このAI技術は、富士通(本社・東京)が開発。九州大との共同研究で、利害が一致しない人々の関係を解決する「ゲーム理論」を応用した。優先順位に沿って全員の希望ができる限りかなう形での保育施設の割り振りを判断できるようにしたという。
実証実験では、さいたま市が協力。同市で昨年度に入所を希望した約8千人について試したところ、数秒で手作業での選考とほぼ一致した結果を導き出した。
例年、同市は成人の日を含む3連休などに職員20~30人がかりで選考、延べ1500時間かけていた。
富士通は「選考の複雑化を避けるため、希望する施設を第3志望程度に絞る自治体もある。AIならもっと多く希望を出しても最適解が出せる」と胸を張る。節減した労力と人件費は他の政策に充てられる副次的効果も期待できるという。
■親にどう…