静岡市北部でのリニア中央新幹線のトンネル工事に伴い、大井川水系の流量の減少が懸念されている問題で、JR東海は静岡県の求めに応じ、建設工事でトンネル内に出るわき水の「全量」を戻す方針を固め、17日に県に通知した。
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JRは当初、「わき水の量と(流量の)減少分が一致しない可能性があり、わき水全量を戻す約束はふさわしくない」と主張。大井川の流量の減少は最大で毎秒2トンと試算し、流量の維持に努めるとしていた。
川勝平太知事はこれに対し、「実際に掘ってみないと、どれほど水が出るかわからない」と反発。工事に向けた基本協定の締結を拒んだ。
JR東海は5月、河川の流量をモニタリングし、減った分に相当するトンネルわき水を戻すことや、渇水時にわき水をポンプアップして河川に戻す設備を設けることを提案。だが、県は「全量を戻す確約ではない」と却下。9月20日、JR東海に質問書を出し、水の減量分の試算の根拠となるデータや説明を求めていた。
リニア中央新幹線をめぐっては静岡市北部の南アルプスを東西に貫く静岡工区だけが未着工。JR東海が着工に向け、県との基本協定締結を急いでいた。(阿久沢悦子)