第66回全日本吹奏楽コンクール(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)は、中学の部が20日に、名古屋市の名古屋国際会議場で開かれた。全国11支部から30校が出場。日頃の練習の成果を大舞台で披露した。
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吹奏楽では珍しいワルツが課題曲に登場(高昌帥)。9校が選び、律義になりすぎず、しなやかにリズムを刻めるかが印象を分けた。広島市立東原はふわりとした音を自然な呼吸に乗せ、急いだり歩を緩めたりしつつ踊りの輪を広げた。
自由曲では、歌心を大切にする演奏が心に残った。筆頭が北斗市立上磯。難曲といわれるブリュッセル・レクイエム(アッペルモント)でも、無理なく全員が流れに乗り、すべての瞬間に歌があった。
宝塚市立中山五月台は蝶々夫人で、プッチーニの朗々たる旋律を伸びやかに歌い、仙台市立第一は互いの響きを聴き合い、音色への気遣いを感じさせた。
吹奏楽らしい英雄的な演奏に、ブラボーの声がこだましたのは北上市立上野。鹿児島市立桜丘も、「交響曲第1番『アークエンジェルズ』」(チェザリーニ)で、雄大な世界観をパワフルに描き出した。
英雄らしさとは別の方向で勝負した演奏も。川口市立神根は「三つのジャポニスム」(真島俊夫)で、打楽器を利かせて洗練された響きを作った。川口市立青木は、力をためてから吹き出させるような方法で、音楽をエネルギーの運動として聞かせた。
最少の25人で演奏した防府市立桑山では、かえって個々人の響きが生きた。課題曲では弾むリズムでマーチ本来の推進力を強調。自由曲「風を織る」(鈴木英史)では、同じ旋律を繰り返す中で、多彩な風の音を息の強さで吹き分けた。
福岡市立姪浜は「パラフレーズ・パァ『スタティック・エ・エクスタティック』アヴェック・アン・プロローグ・エ・レピローグ」(天野正道)で、明るさの裏にのぞく陰りを繊細に表現。同じ曲を選んだ柏市立酒井根は、要所で旋律を心憎いほどつややかに歌い上げた。
曲づくりに力を発揮したのが朝霞市立朝霞第一。課題曲のワルツからは、意外にもメランコリックな側面を引き出し、「マノン・レスコー」(プッチーニ)では、振り幅の大きな曲を立体的に奏でた。
出雲市立第一のように、隅々まで指揮者の意図が行き渡った演奏がある一方で、ある程度までは奏者に任せ、やる気を解放するような指揮もあった。「ルイ・ブージョワーの賛歌による変奏曲」(C・T・スミス)に挑んだ高岡市立芳野が好例で、難曲を高速で駆け抜けるスリルが快感だった。(安部美香子)