台湾東部の宜蘭県で起きた脱線事故は、200人以上の死傷者を出す大惨事となった。犠牲となった18人のなかには、中学生3人と引率の教師2人も含まれていた。「なぜ、こんなことに」。搬送先の病院に駆けつけた遺族らは、やり場のない怒りと悲しみに暮れていた。
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事故が起きた台湾鉄道の新馬駅。発生から一夜明けた22日午前6時半過ぎ、現場には脱線して横転した車両を撤去するためのクレーン車が運び込まれていた。
先頭車両は完全に横倒しになり、車輪が斜め上を向いている。脱線後に近くの壁などに衝突したのか、鼻先がゆがんだ状態になっていた。付近には、乗客の荷物や車内の座席のようなものが散乱している。
脱線時の衝撃はかなり大きかったのだろう。後方の車両も、車体の一部がへこんだり、扉がゆがんだりしていた。
200人以上の死傷者らは、現場近くの複数の病院に分散して収容された。
曽宏国さん(39)は、台湾北部の新北市から前夜に駆けつけた。妻の妹の張加穎さん(30)が亡くなった。張さんは、脱線した特急列車の終点だった台東県の中学校の英語教師。生徒ら20人を引率して、韓国で開かれた英語スピーチコンテストに出場し、21日午後、台湾に戻ってきたところだったという。
台東県は先住民が多く暮らす地域だ。曽さんは「彼女は都会ではなく、地方の学校で子どもたちに教えたいと志願して赴任した。教育熱心で明るく、良い先生だったのに……」と語って涙ぐんだ。
張さんの両親は「亡くなった現実を受け止められない」と、現場には来られずにいるという。
事故原因は、台湾鉄道が調査中だ。地元メディアは、速度超過や安全システムの不具合などの可能性を指摘しているが、確かな原因は分かっていない。(宜蘭〈台湾東部〉=西本秀)