能登半島の旅館で毎晩、女性だけのショーが繰り広げられている。和倉温泉(石川県七尾市)の老舗旅館加賀屋の専属、その名は「雪月花(せつげつか)歌劇団」。大阪市のOSK日本歌劇団の解散騒動のなかで生まれ、15周年を迎えた。
10月上旬の夜、加賀屋1階のシアタークラブ花吹雪で雪組「レビュー・アニバーサリー」の幕があがった。スパンコールきらめく衣装を着た男役のトップスター鞍馬(くらま)みしろさんがポーズをきめ、娘役がドレスをひらめかせて踊る。ワンドリンク付き3500円。約40分のステージが毎晩2回上演される。「ほお~っ」。200ほどの客席をうめるのは浴衣姿の宿泊客らだ。
雪組の出演者9人は4カ月続く公演で歌って踊って芝居し、握手タイムと駆けまわる。「一日だって舞台に穴をあけられない。緊張感でいっぱい」と鞍馬さん。元OSKの2人のほか各地から集まった俳優らが1カ月の稽古の後、寮生活を送って公演に臨む。
ここでは、「雪」「月」「花」の3組が4カ月交代で年中上演している。団員は20~30代が中心だ。旅館専属の歌劇団の通年公演は極めて珍しいという。
静岡県浜松市の自営業岩間誠蔵さん(56)、恵さん(56)夫婦はホームページで知り、初めて見にきた。「みなさん全力でがんばっている。力をもらいます」と目を見張る誠蔵さんに、「汗が見えるほど間近で、ハイタッチもしてくれる。近さがだいご味」と恵さん。会社経営の篠原一喜さん(62)は横浜市から男友だち5人で来た。「華やかだね~。この価格でこんなにすごいものが見られるとは。思いっきり拍手したよ」
1906年創業の加賀屋は旅行…