ソフトバンクホークスの本拠地、福岡市博多区の歓楽街・中洲に、広島カープファンが集まるバーがある。日本シリーズを戦う「敵地」で、ファンが真っ赤に燃えている。
10月31日のシリーズ第4戦。四回に鈴木誠也選手のホームランが飛び出すと、カープグッズに囲まれた店内に応援歌が響いた。「今日もカープは勝ち勝ち勝ち勝ち」。この日は敗れたが、ヤフオクドームで観戦したファンも駆けつけ、ホークスファンも交じって野球談議に花を咲かせた。
店は「勝つじゃろ!赤ヘル」。経営する中津亮佑さん(37)は広島県呉市出身で、30歳の頃、福岡に来て3年ほど飲食店の店長などを務めた。自分の店を持ちたいと考えたとき、福岡には集まる場所が乏しく、カープファンが「飢えている」と思ったという。
2014年に開店。知人らはホークスの地元での開業を危ぶんだが、店を出せばファンが集まり、経営もやっていけるはずだ、と勝算があった。「当初は誰も来ない日もあった」ものの、口コミで徐々に存在は知られるようになり、いまでは遠征に来た選手や、福岡出身の一岡竜司投手の家族らも来店するようになった。
店のこだわりは「とにかく真っ赤」。選手のサイン色紙やグッズが並び、新聞や雑誌の記事も天井まで貼られている。
月に何度か来店するという福岡市の会社員秋田美香さん(47)は「生まれた時からカープファン」。広島から転勤で来たが、「『カープが勝った負けた』という話ができず、もんもんとしていた」という。3年ほど前に店を知り、今では「心のよりどころ」だ。
日本一をかけたホークスとの対戦。中津さんは「こんな時代が来るとは思わなかった。本当にうれしい」と、喜びをかみしめている。(角詠之)