腎機能を失った人が、機械で体の水分や血中の老廃物を定期的に取り除く人工透析は、多くの患者が1回4時間、週3回のスケジュールで受けている。働き盛りの人にとっては、仕事との両立が難しい。そんな人たちに夜の睡眠時間を活用して8時間かけて透析をする「オーバーナイト」という方法を提供する医療機関がある。体にもやさしいという長時間透析の現場を訪ねた。(中村通子)
重井医学研究所病院(岡山市南区)は2015年春、オーバーナイト透析を始めた。夜9時~10時の間に透析を開始し、8時間後の翌朝5~6時に終える。現在、8人が利用している。全員40~60代で、フルタイムで働いている。
岡山市の男性(47)もその一人。月水金の夜9時に透析室に入る。
男性は15年前に突然、腎不全になった。頭痛や発熱、疲労感などにさいなまれていたが、仕事が忙しく「疲れだな」と自己判断していた。
頭痛が悪化して眠れなくなり、近所の医院に行ったら、すぐに大学病院に紹介され、即入院になった。すでに腎臓はほとんど機能を失っていた。原因は分かっていない。
退院後は外来で透析を続けている。最初の2、3年は午前中に4時間透析を受け、午後から出社していたが体がしんどくて、午後4時開始に変更した。
透析日は、遅くても午後3時過ぎに仕事を切り上げなければならない。透析のない日に残業して頑張っていたつもりだが、どうしても同僚に気兼ねする。「ストレスがたまりました」
そんな生活を10年以上続け、今年1月に主治医からオーバーナイトへの変更を打診された。「腕に針を刺している状態で熟睡できるのか。週3日も夜、妻と娘たちだけにして不用心じゃないか。色々心配でした」
まずは試してみたらと促され、挑戦した。透析日の夜は近くに住む両親が助けてくれることになった。
腕に刺した針には血液の漏れを…