山口県光市の塩田地区で捕獲されたオスの子ザルが猿まわしの芸を仕込まれ、18日、「ひかりふるさとまつり」でデビューする。名前は故郷にちなんで「しおたろう」。市内に本部がある「周防猿まわしの会」に引き取られ、熊本県で稽古を重ねてきた。「ぜひ応援を」と、会は呼びかけている。
14日午後、光市内であったリハーサル。半袖シャツに赤い蝶(ちょう)ネクタイをつけたしおたろうは、コンビを組む調教師の「ぴーすけ」こと村崎英治さん(36)の指導で、玉乗りやハードルジャンプを演じてみせた。
「里帰りしたばかりでまだ緊張が抜けず、仕上がりはいま一つ。さらに稽古に励み、万全の状態で4日後の本番を迎えたい」と村崎さん。
しおたろうが捕獲されたのは昨年1月。サルが農作物を食い荒らす被害が深刻化したため、市が有害鳥獣対策として設置した大型の囲いわなに、親子ら6匹がかかった。
「このまま殺処分するのはしのびない」と、市は猿まわしの会に引き取りを依頼。6匹は、会が熊本県南阿蘇村で経営する「阿蘇猿まわし劇場」に運ばれ、調教の適齢期だった1歳のしおたろうが芸猿の候補生に抜擢(ばってき)された。
猿まわしは千年以上の歴史がある伝統芸能。大正時代までは芸人の拠点が光市内にあり、全国各地を旅して演じていた。1960年代に一時消滅したが、村崎さんの祖父、故義正さんが77年に会をつくり、その翌年に猿まわしを復活させた。
しおたろうは今、2歳。のみ込みも早く、芸の基本である立ち居振る舞いや姿勢、立ち回りを習得すると、芸の挑戦を始めた。
「野生のサルだけに走るスピードや跳躍力など身体能力が高い。毛づやもよく、目のぱっちりしたイケメン。将来がとても楽しみ」と村崎さん。
市によると、囲いわなで捕獲されたサルはこれまでに計50匹ほど。すべて会に引き取られ、南阿蘇で生活している。大半は繁殖が目的だが、しおたろうに続く芸猿が誕生する可能性も少なくない。
「しおたろうとコンビを組んで1年ほど。これからどんどん大技や小技を覚えさせ、ゆくゆくは会のトップスターに育てたい」。村崎さんは目を輝かせた。
18日の「ふるさとまつり」は午前9時から、大和総合運動公園で。開会式の後、お披露目公演がある。(三沢敦)