米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は14日、米フェイスブック(FB)が2016年の米大統領選でロシアによる介入を招いた際、16年春には社内で介入疑惑の指摘があったのに、17年9月までロシアの関与を外部に明かさなかったと報じた。大統領候補だったトランプ氏の差別的な投稿の是非を社内で議論したにもかかわらず、保守層からの批判を恐れて容認していた、とも伝えた。
16年の大統領選を巡っては、ロシアが大量の偽アカウントをFBに作って偽ニュースを組織的に流し、選挙結果を左右したとされる。FBのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が明確に謝罪したのは、今春、英選挙コンサル会社に大量の個人情報が流出していたことをNYTなどが報じた後だった。
NYTは14日、ロシアによる介入にFBがどう対応したのかを検証した長文の調査報道記事を掲載した。
それによると、FBの社内で16年春、ロシアのサイバー攻撃に詳しい技術者が異変に気づいた。その数カ月後、ロシアのハッカー関連のアカウントが民主党側から盗み出した電子メールの情報を記者に送っていることを、社内の安全対策チームが確認。16年12月にザッカーバーグ氏やサンドバーグ最高執行責任者(COO)に伝えられたという。17年1月には、ロシアの関与を社外に公表するかどうかが議論されたが、政界対策を担当する幹部が反対。サンドバーグ氏はその幹部を支持した。FBは17年9月にロシアの関与を限定的に認めるまで、外部には否定し続けていたという。
また、大統領候補だったトランプ氏が15年にFB上で「イスラム教徒の米国への入国の全面禁止」を訴えた際、その内容に驚いたザッカーバーグ氏がサンドバーグ氏らに対して、差別的な投稿として規約違反にならないか検討するように求めたという。しかし、政界対策担当の幹部がトランプ氏や支持者の反発を恐れて「面倒な相手を怒らせるべきではない」と主張し、FBは結局容認していたという。
FBは14日、朝日新聞の取材に対し、「FBでは、つらい時期が続いており、経営陣全体が直面する問題への対処に注力している。これらは困難な問題だが、人々に我々の製品を有益だと思ってもらい、我々のコミュニティーを悪い者たちから守れるよう、私たちは懸命に取り組んでいる」と回答。NYTの記事の内容には具体的にコメントしなかった。(サンフランシスコ=尾形聡彦)