銀行の現金自動出入機(ATM)などで使われている指の静脈認証は、撮影条件と画像処理技術がそろえば、他人の指の画像を使ってなりすませるリスクがあることが、国立情報学研究所の研究で明らかになった。指の静脈のパターンは一人ひとり違うのに、なぜなりすましが可能なのか。
静脈は皮膚の下にあり、可視光では鮮明な読み取りが難しい。このため静脈認証は安全性が高い生体認証技術とされる。ATMのほか社員の出入館の管理などでも使われている。現在のセンサーは、静脈を流れる酸素を運び終えた赤血球が近赤外線を吸収しやすい性質を利用し、静脈パターンを読み取るのが一般的だ。
越前功教授らのチームは、日中の晴れた屋外の明るさの下、一眼レフのデジタルカメラとズームレンズを使って約50センチ先から指を撮影。画像編集ソフトなどで特殊な処理を行うと、静脈パターンを取り出せた。
得られた静脈パターンを紙に印刷し、静脈センサーに近づけた結果、研究者2人の指16本のうち、11本の画像をセンサーが認識した。なりすましが可能なことが示された。ただ、成功する撮影条件は限られていた。センサーはさまざまな認識の方法があり、工夫もされており、チームはなりすましを認識できるのは一部の機種に限られるとみている。「ATMなどですぐ悪用されるわけではない」と越前教授は話す。
チームは静脈パターンを盗まれ…