奈良県三郷町の地場産業の雪駄(せった)が、スタイリッシュな「セッタ」として人気を集めている。地元のカフェ経営者と職人の両夫妻4人によるプロジェクト。高いデザイン性と履き心地が支持され、今秋にはニューヨークでも販売が始まった。
JR三郷駅近くにあるカフェ・ファンチャーナ。入り口の扉を開けると、カラフルなセッタが通路脇に陳列されていた。
その数、60足。カフェのオーナー星田和彦さん(42)が社長を務める「DESIGN SETTA SANGO」のセッタだ。広報担当の妻純子さん(35)は「インスタ映えするデザインでSNSでも好評です」。
三郷町の雪駄は、明治時代の鼻緒づくりから続く地場産業だ。ただ、洋服が主流となって需要は減少。「現代のライフスタイルに合うように」と考案されたのが、このセッタだ。
作っているのは、和装履物を製造する「芝惣(しばそう)商店」の芝崎多加夫さん(36)と妻の綾さん(35)。二人とも、1917(大正6)年創業の鼻緒製造業の流れを受け継ぐ職人だ。
始まりは2013年。芝崎夫妻がカフェの常連客だったのが縁だった。町内の地場産業を紹介する催しに、一緒に新作の雪駄を出すことで意気投合した。
芝崎夫妻は、ビンテージ(古い生地)で鼻緒を作るアイデアを温めていた。「通常は少しでも安く売る業界。ビンテージだと高くなるが、少量多品種なら勝負できると思ったんです」
生地は、ドイツやスイスなどで50年以上昔に使われたデザイン性豊かなものを選んだ。販売すると、一般的な雪駄よりも数千円高いにもかかわらず、完売した。「オシャレとかカワイイとか、とてもいい反応を頂きました」と和彦さん。
手応えをつかみ、足の裏が触れる部分は、通気性のいいコーヒー豆の麻袋の素材などを採用。薄かった底部分にはクッション材を入れた。痛くない、ふかふかの履き心地だ。テキスタイル作家とのコラボも進めた。
「いつかファッションの本場イ…