共働きやひとり親家庭の小学生が放課後を過ごす「学童保育」(放課後児童クラブ)について、政府は来年度から職員の配置や資格の基準を事実上、撤廃する。2015年にできた全国一律の基準は4年でなくなることになる。待機児童の増加に対応するには、地方自治体の裁量に委ねるべきだとする全国知事会などの要請に応え、来年の通常国会に児童福祉法改正案を提出、成立を目指す。一方、保護者側からは見直し後の「質」を心配する声が上がる。
政府は2015年度から保育の「受け皿拡大」と「質の向上」に向けた子ども・子育て支援の新制度を施行。この動きに合わせ、厚生労働省は児童福祉法に基づく省令で、学童保育の運営にあたっての「従うべき基準」を施行した。市町村などの判断に任され、ばらつきがあった運営について、全国一律の最低基準を示すことで保育の質の底上げを図った。
基準では▽1教室に職員は2人以上▽そのうち1人は保育士や社会福祉士などで、かつ、都道府県の研修を受けた「放課後児童支援員」、などと定めている。
政府は19日、内閣府の地方分権改革有識者会議の専門部会で、「従うべき基準」を「参酌すべき(参考にすべき)基準」に変更する方針を示した。児福法改正と厚労省令の改正を経て「参酌すべき基準」となれば、自治体が基準に従う義務はなくなる。従来通り厚労省の基準に沿って運営することも、条例を改正して独自の基準を定めることも、市町村の判断に委ねられる。
働く女性の増加などに伴い、学童保育のニーズは増えている。厚労省によると、昨年5月1日時点の利用登録は117万1162人(前年比7万8077人増)、待機児童は1万7170人(同33人減)。政府は、来年度から3年間で定員を約25万人分増やす目標を掲げている。
だが全国知事会と全国市長会、全国町村会はそろって、基準を満たすだけの職員を確保するのは難しいと主張。昨年、地方分権改革有識者会議の専門部会に対し、廃止を含む基準の抜本的な見直しを要請した。保育の質が低下しかねないとの指摘には、「地域の特性を踏まえて創意工夫を行うことで質を保つことは十分可能」と訴えた。
これに対し、厚労省は「子どもの安全性確保から基準は不可欠」と反論。「落としどころ」として基準の一部緩和を探ったが、全国知事会などの理解を得られず協議は膠着(こうちゃく)していた。厚労省幹部によると、「最近になって、(根本匠)厚労相が地方の要望に応じる判断をした」という。「従うべき基準」の内容はそのまま残し、「参酌すべき基準」にとどめる方針が固まった。
全国知事会など地方6団体の地方分権改革推進本部事務局は19日、朝日新聞の取材に対して「政府の対応を評価する」と話した。全国市長会の副会長を務める東京都三鷹市の清原慶子市長も「地域の実情を踏まえ、保育環境の安全と質の確保を図っていく」とコメントした。
「保育の質に格差」保護者反発
ただ、全国一律の基準が事実上…