広島県福山市立動物園で飼育されているゾウの「ふくちゃん」は3年前、結核になった。症状が落ち着きいったん治療を終えたが、再発の可能性がある。動物園がクラウドファンディング(CF)で支援を募ったところ5日で350万円が集まり、首都圏や大阪にもその輪が広がっている。
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マレーシア・ボルネオ島で親とはぐれたところを保護され、2001年に福山にやって来た。動物園によると、現在国内で唯一のボルネオゾウ。推定20歳の雌で、体長は2メートルほどと小柄。頭のふさふさした毛と、笑っているような目を細めるしぐさが人気だ。
ボルネオゾウの平均寿命は50~60年とされ、まだ若いが、15年秋から体重が激減し、翌年3月に結核と診断された。国内で治療例がなく、人の結核治療の専門医に尋ねたり、海外の文献を集めたりと試行錯誤しながら座薬や経口薬を与えた。飼育員は200錠近くのカプセルを一つずつ外し、薬を糖蜜や小麦粉、米菓子と合わせた団子にして毎日与えてきた。
2500キロあった体重が300キロ以上減るなど一時は命の危険もあった。今年10月に投薬は終えたが、再発の可能性が残る。そこで冬用の暖房機器や結核検査キット、ストレス解消用のおもちゃの製作費用をCFで募ることにした。
募集期間は10月1日から11月末だったが、最初の目標の150万円は2日目、次の目標の350万円は5日目で達成した。寺岡千佳雄園長は「支援が集まるか半信半疑だったので驚いた。しかも一般の方の少額な支援ばかり。予想外でした」と話す。
CFを運営する「READYFOR」によると、大阪、新宿、横浜など遠方からの支援が目立った。「ツイッターで初めて知りました」といったメッセージも多数、寄せられた。担当者は「以前からふくちゃんを応援していたファンのコミュニティーもあって注目度が高く、そこに動物を支援しているCFのユーザーが加わった」と見ている。
新たに目標金額に掲げた500万円も達成。28日午前現在では630万円超が集まり、「ふくちゃん、頑張って」「また会いに行くよ!」といった応援コメントも800件近く寄せられている。支援金は来夏の暑さ対策として、ミストシャワーなどの設置にあてる予定だ。寺岡園長は「ふくちゃんが安心して暮らせる環境を作っていきたい」と話している。(橋本拓樹)