地域で働く医師を確保する「地域枠」のために臨時的に医学部増員が認められた66大学のうち、半数の33大学で今年度の地域枠定員を満たさなかったことが、厚生労働省と文部科学省の調査でわかった。欠員は2割近くに上り、多くが一般学生の入学枠に流用されたとみられる。
臨時増員による今年度の地域枠定員は計1014人。調査によると、地域で一定期間働くことなどを条件に都道府県が貸す奨学金を187人(18%)が受け取っていなかった。厚労省は、奨学金の貸与がなければ、基本的に地域枠の学生とみなせないとしている。
国は地域の医師不足を解消するため、2008年度から医学部を臨時的に増員して地域枠を増やせる制度を開始。厚労省によると、臨時定員の地域枠の募集数は08~18年度で計8956人で、うち1393人(16%)は奨学金を受け取っていなかった。
地域枠は、一般枠とは別に募集定員を設ける「別枠」と、一般枠と共通で選抜した人の中から募る「手挙げ」がある。奨学金貸与は別枠が95%だった一方、手挙げは69%と低く、厚労省は20年度入試から地域枠の募集方法は別枠に限る方針を決めている。(阿部彰芳)