中国・南方科技大の賀建奎副教授が、ゲノム編集によって遺伝子を改変した受精卵で双子を誕生させたと主張していることについて、日本ゲノム編集学会は30日、「事実であれば、倫理規範上も大きな問題がある」と批判する声明を出した。日本医師会と日本医学会も「医学的必要性や妥当性がなく、安全面からも大きな問題がある」とする共同声明を発表した。
ゲノム編集した双子、誕生はうそ? 中国で批判広がる
ゲノム編集学会の声明は、今回の中国のケースは所属大学にすら報告せず実施しており、「研究の自由の範囲を逸脱し、生まれてきた女児の人権に大きな問題を起こす可能性がある」と指摘。ゲノム編集技術は有効性と安全性が確立されておらず、影響が子孫に引き継がれる可能性がある受精卵に使うことは、現段階で決して許されることではないとした。
中国関係当局には、厳密で透明性のある調査、対応を望むとした。日本でも国内のガイドラインを守り、倫理規範に従って研究が推進されることを求めた。
日本遺伝子細胞治療学会も声明を出し、ヒトの生殖細胞や胚(はい)のゲノム編集の臨床応用を禁止すべきだとする立場を、改めて示した。
一方、柴山昌彦文部科学相は閣議後の会見で、情報収集に努めるとともに、ヒトの受精卵をゲノム編集する研究の指針を速やかに策定する考えを示した。そのうえで「臨床応用については技術的安全性、倫理的課題双方のさらなる検討が必要だ」と、認識を述べた。(編集委員・瀬川茂子、小宮山亮磨)