かなしみの片手ひらいて渡り鳥――。膨大な古今の俳句の手法を学んだ人工知能(AI)が、着実に力を付け、俳人をうならせる句を詠みつつある。五感と語感を研ぎ澄まし、自然美や喜怒哀楽を五・七・五で表す伝統文芸の世界に、AIがどう挑んでいくのか。
札幌市にある北海道大調和系工学研究室で、大学院情報科学研究科の川村秀憲教授(45)がパソコンを操作すると、一瞬で画面が文字で埋め尽くされた。一つひとつが俳句だ。「1秒間に約40句を詠みます」と川村教授は笑顔を見せる。
人工知能が専門の川村教授が「AI俳句」に取り組み始めたのは昨年。人間の五感が凝縮した俳句をAIに理解させ、感性や独創性を備えさせようと考えた。研究を知ったテレビ局に人間との対決を打診され、研究を本格化させた。
川村教授によると、AIは過去に詠まれた大量の俳句をデータとして読み込み、単語のつながりや季語などを学ぶ。AI自らがディープラーニング(DL、深層学習)と呼ばれる手法で学習を深めるが、現時点では完成句から秀句を選ぶ判断力はなく、人間の手を借りなければならない。
テレビ対決は今年1月。人間と…