妊婦が医療機関を受診した際に払う追加料金「妊婦加算」が見直される見通しとなった。自民党の小泉進次郎・厚生労働部会長は13日、「妊婦さんに自己負担を発生させることは容認できないというのが部会の総意だ」とし、年末までに妊婦本人が追加料金を払わなくて済むような対応策をまとめるよう厚生労働省に指示。厚労省が検討を始めた。
妊婦加算は、医療機関や保険者らで構成される中央社会保険医療協議会(中医協=厚労相の諮問機関)の議論を経て、今年4月から導入された。「妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療を評価する」、つまり、胎児や母体にとって安全な薬や検査方法を選ぶなど丁寧な診療への評価という趣旨で、妊婦健診と歯科を除く全ての診察が対象となっている。妊婦加算の金額は受診時間帯によって異なり、自己負担が3割なら初診で230~650円、再診で110~510円だ。
だが、妊婦や家族からは「妊婦の負担だけがさらに大きくなるのは不公平だ。十分な説明もなかった」「少子化対策と矛盾している」などと批判が続出。コンタクトレンズをつくるための眼科受診も対象となっていたり、医師らが妊婦だと気付いたのは診察後だったのに加算分を請求された人がいたりしたため、一層反発は強まった。
厚労省は13日、自民、公明両党の厚労部会に改善策を提示。コンタクトレンズの処方や眼鏡をつくるための視力検査、いぼの除去などの診療や、医師が妊婦と判断せずに診察を行った場合などは妊婦加算の対象外だと明確化するとした。また、妊婦加算請求の条件に、医師が妊娠中の健康管理などについて説明し、カルテに記録することを挙げた。ただ、制度自体の見直しについては、再来年度の診療報酬改定時に検討するとした。
これに対し、自民の厚労部会では「対応が不十分」「(問題解決の)先送りだ」といった批判が相次いだ。小泉氏は部会終了後の記者会見で、「妊婦への丁寧な診察をしている医療機関への対応は大事」と制度の趣旨には理解を示す一方で、「それ(費用)を妊婦が負担するのは違う」として年末までに対策を講じる必要があると強調した。
公明党の高木美智代・厚労部会長も同日の部会で、「(追加の)自己負担を求めないという『凍結』も視野に入れて検討していただきたい」と厚労省に注文を付けた。
厚労省は想定を超える与党の「見直し圧力」にあらがえず、対応策を検討せざるを得ない状況に追い込まれた。妊婦加算を公費で肩代わりする「応急措置」には約10億円の予算が必要になるが、厚労省幹部は「手当てできない金額ではない」と話す。むしろ、どうやって個々の妊婦の加算分を肩代わりするかの仕組みを整えることや、制度導入を決めた中医協の理解を得ることの方が難しいとの見方を示している。