JR東海のリニア中央新幹線建設で長野県内最初の関連工事となった中川村の県道トンネルが完成し、15日、開通式があった。大鹿村の本線トンネル残土を村外へ円滑に運ぶ目的の道路改良だが、肝心の搬送先は全く決まっていない。残土問題の困難さをあぶり出す形の式典に、出席者らも祝賀一色とはならなかった。
完成したのは、南アルプスの懐にある大鹿村と天竜川岸の松川町とを結ぶ県道松川インター大鹿線の「西下トンネル」(長さ878メートル)。急傾斜面が多い大鹿村は大量の残土処理に不向きで、JRは当初から村内の南アルプス、伊那山地の両トンネル工事で出る残土300万立方メートルのほぼ全量を村外へ運ぶ意向だった。
搬送ルートとされた山あいの県道は曲がりくねり、幅員も狭い。大型ダンプのすれ違いもできるように、JRと県が共同で二つのトンネル建設計画を立て、2016年8月に西下トンネルがまず着工していた。
開通式は、大鹿、中川両村と松川町でつくる県道改良促進期成同盟会(会長=柳島貞康大鹿村長)が主催し、県やJR東海などを含む約50人が出席した。
「実は、喜び半分なのです」。開通式に出席した大鹿村議会議長の熊谷英俊さんは、そう打ち明ける。
この県道は、大鹿村民が飯田市などとの往来に利用する「生命線」。県に要請しても期待通りにならなかった道路改良が、残土の搬送路となることで一気に進む。「リニアのおかげで通行しやすい道になる」と考え、1日に千台超のダンプカーが往復する計画を認めた村民も少なくない。
熊谷さんも「道路改良はありがたい」と話しつつ、リニア残土の大半について、村外の受け入れ先が一つも決まっていないことが気がかりでならない。
16年10月。JRが11月1…