中国ネット通販大手の京東(チントン)集団が、サラダ用の野菜工場を北京につくった。火を通して野菜を食べることが多い中国で、生の野菜をIT企業が手がけるわけとは。
1万平方メートルほどもある巨大なビニールハウスに、ホウレンソウやレタス、サラダ菜など6種類の野菜がずらり。京東が今月、北京郊外につくった工場だ。
自然の光と人工の光を組み合わせることで、ほぼ均一の大きさに成長させることができる。出荷までの期間は、レタスなら最速で5~6週間。この間、農薬は使わずに済む。設備や技術は、日本の三菱ケミカルなどから導入した。
見せてもらったレタスの根は、真っ白だった。病気がない証拠、と京東の担当者は言う。「ここで育てたホウレンソウはえぐみが少なく食べやすい。子どもも安心して食べられます」
京東は、これらの野菜を自社の通販サイトや実店舗のスーパーチェーン「7フレッシュ」で扱う。
京東の高級副総裁、王笑松(ワンシアオソン)氏は「サプライチェーンの源に行くことで、消費者に安全なものを提供できる」と話す。売れ行きが好調なら野菜工場の増設も検討する。
もともと、野菜を生で食べる中国人は多くない。トマトですら、炒め物やスープの具にすることが多い。
しかし、食の欧米化が進んでサラダやサンドイッチを食べる人が増加。京東はその需要を、物流ネットワークを生かして、つかもうとしている。約7万人もの配達員を社内に抱え、ドローンを使った配達も手がける。北京近郊であれば、注文を受けた当日に野菜を届けられるという。
どこで、どんな野菜を作ったのか。安全や安心にかかわる情報の公開も「売り物」にする。
京東のスーパー、7フレッシュが北京市に構える店をのぞくと、果物の売り場にバーコード読み取り機があった。客が、果物の包装にあるQRコードをかざすと、画面には生産地や糖度のほか、加工センターや店に着いた時間なども表示される。魚売り場も同様だ。今後は、工場で作った野菜にも、このシステムを導入する。(新宅あゆみ)