チーン。その音で、荒れた教室が静まりかえった――。山口県立山口高校通信制の久原(くはら)弘教諭(59)が、お経をあげるときに使う「おりん」をテーマに仏具製作会社が募ったエッセーコンクールで、大賞を受賞した。荒れたクラスで生徒を静かにさせようと鳴らしたところ、教室が静かになった体験をユーモアたっぷりに書いた。
山口久乗(きゅうじょう)(富山県高岡市)が主催した第1回おりん・音風景エッセイ大賞には483編の応募があり、久原教諭の「私の相棒~おりん~」が最高賞の「おりん大賞」に選ばれた。
エッセーで取り上げたのは、まだ駆け出しの教師だった約30年前の話だ。
初めて赴任した高校は「バリバリのヤンキー学校」。生徒は授業中に大声で騒ぎ、殴り合いのけんかもした。シンナーを吸う生徒までいた。大声を張り上げても、教壇をたたいても、何の効果もなかった。
なんとか生徒を静かにさせようと、さまざまな工夫をした。授業前にクラシック音楽をかけたが、生徒は「気分が悪くなるわ」。鳥や虫の美しい鳴き声をラジカセで流しても「胸くそ悪い」。
ある日、母が朝晩のお経をあげるときに鳴らしていた「おりん」を使ってみようと思い立った。「チーン」という音を聞くと、安らかな気持ちになることを思い出したからだ。
教室に持ち込んで鳴らしてみた…