高松市の中心部を南北に貫く中央通り。中央分離帯のクスノキにすみつくムクドリのフンが路面を汚し、走行中の車に落ちる。11月には片側3車線の真ん中を走るよう促す看板も現れた。中央通りなのに、「中央」が走れない事態になっている。
中央通りは、JR高松駅前から南の栗林公園前までの約2・4キロにわたる国道11号、30号の愛称。中央分離帯に10メートルほどの間隔でクスノキが植えられている。
「キーキー」。12月のある日の夕方。クスノキから、多数のムクドリの鳴き声が響いていた。クスノキをねぐらにし、日が暮れる頃に戻ってくるのだ。
日本野鳥の会香川県支部によると、中央通りのクスノキは大きくて葉が密集し、ムクドリは身を隠しやすい。人や車も多くて外敵に狙われにくく、ねぐらとしては好条件という。
「フンで路面が汚い」「臭いがひどい」。道路を管理する国土交通省の香川河川国道事務所には、今年4月から7件の苦情や要望が寄せられた。毎年のことだという。
事務所はこれまで、鳥が嫌う臭いを発するロープを幹に巻いたり、方向感覚を狂わせる磁気を出す機械を置いたりした。だが、いずれも効果は得られず、被害は減らなかった。
昔は枝葉が伸びるたびに短く切り、ねぐらにはなりにくかった。しかし、「高松のシンボルとして守りたい」と市民団体などが反発。1982年を最後に、短く切るのをやめた。
現在は、枝葉が信号や標識を隠すなど通行に支障がある場合のみ、必要最低限の枝切りをしている。また、「ムクドリを追い出すのは難しい」として、代わりに路面を頻繁に清掃している。ほかの国道は原則的に年に1回だが、中央通りは5~7回だ。
一方、事務所は11月上旬、2種類の看板を中央分離帯に立てた。「前方右折待ち 車両注意」「直進車 中央車線へ」。3車線の右側の車線に右折待ちで止まる車に、後続の直進車が追突するおそれがある。新聞にこんな投書が載っているのを見て、設置した。
中央通りには、クスノキが場所を取り、右折車線を設けられない地点がある。看板は、右側の車線を走る直進車に真ん中へ移るよう促している。
ムクドリと看板。この二つのおかげで、真ん中の車線は混雑しがちだ。「クスノキもムクドリも、そしてドライバーも、うまく共存していければいいですね」。事務所の担当者はこう話している。(福井万穂)