1964年の東京五輪が国民の語りぐさになっている国がある。北アフリカのチュニジア。東京五輪で同国初のメダリストが誕生した。その当人である陸上男子1万メートルの銀メダリスト、ムハンマド・ガムーディさん(80)が11月末の訪日時に朝日新聞の取材に応じ、「2020年の東京五輪も応援に来たい。母国選手の活躍を見たい」と語った。
世紀の大レース――。当時、朝日新聞がそう報じた陸上男子1万メートル決勝は、東京・代々木の国立競技場で64年10月14日夕に開催された。レースは当時の世界記録保持者である豪州のクラーク選手を軸に、終盤まで先頭集団がだんご状態でもつれ合う大激戦になった。
残り約300メートル。競り合うクラーク選手ら先頭2人の間に割って入り、首位に立ったのがガムーディさんだった。
だが、そのままゴールとはなら…