この春、30年余り続いた平成の時代が終わる。平成とは何だったのか。未来に抱く思いとは。大正、昭和、平成を生き抜き、京都を拠点に活動する作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(96)と、昭和の終わりに生まれ、平成の世で育った秘書の瀬尾まなほさん(30)に聞いた。
――徳島県出身の寂聴さんは1974(昭和49)年、京都市右京区に寂庵を結びました。瀬尾さんは兵庫県出身で、右京区の京都外国語大学に進学しました。なぜ京都だったのでしょうか。
瀬戸内寂聴(寂) 京都とは縁があるんですよね。東京から家出した時に来たのが京都。東京女子大の時の友だち2人がいたんです。それからまた東京に出ては京都に戻って。京都は暮らしやすいんです。
瀬尾まなほ(ま) 私は外国語大学に行きたかったので、京都か大阪か悩んだんですけど、母がまちなかにある方がいいよと言ってくれて、京都外国語大学に進みました。街もあるんですけど、ちょっと行ったら山もある。すごくいいなって思います。
寂 でも普通は京都の人は意地悪だから、いじめられて住みにくいところなんですって。「どうして私はいじめられないで快適なの?」と祇園のおかみに聞いたら、「先生のことを誰も人間と思ってないから、いじめがいがない」って(笑)。
――瀬尾さんは大学を卒業して寂庵に就職しました。66歳差ですが、お互いに世代の違いを感じることはありますか。
寂 (瀬尾さんが)寂庵に来た時、私が尼さんということは知っていたけど、小説家ということは知らないんですよ。そのことにまず驚いた。谷崎潤一郎の「細雪(ささめゆき)」を「ほそゆき」と言うし。2人で街に行くと、孫を連れたおじいさんがこちらに向かって手を合わせて拝むんですよ。すると、「あの人、ここにお地蔵さんもないのに何を拝んでいるのかしら」なんて言うんですよ。「私よ!」って。とにかく不思議でしょうがない。
ま いつも一緒にいて、色んな面を見てるから、「生き仏」じゃなくてすごく人間らしい。だから、拝むというのがちょっとよくわからなくて。
寂 寂庵にスタッフはたくさんいましたけど、こんなに若い子はいませんでした。
ま みなさん、すごく敬ってました。
寂 そういう世代の違いは感じますけど、それがおもしろい。違うからおもしろい。
――平成が終わりますが、振り返ってみて世の中はどう変わりましたか。
寂 そんなこと一言じゃ言えま…