建設中の新国立競技場前に立つ狂言師の野村萬斎さん=東京都新宿区霞ケ丘町、外山俊樹撮影
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(フロントランナー)狂言師・野村萬斎さん(52)
どこから来たか、何を考えているかわからない。謎めいた空気をまとう、数少なくなった型の表現者だ。
黒澤映画「乱」で盲目の少年、朝ドラ「あぐり」では風来坊な父、「にほんごであそぼ」なら「ややこしや」の狂言師。長く印象に残る役を30年以上演じてきた。軸足は生の舞台に置く。家業の狂言はもちろん、シェークスピアや現代劇も。近年の活動は特に充実している。
2017年に演出、主演した木下順二作「子午線の祀(まつ)り」は「僕の芸術観に強く影響しているといって過言ではない」作品となった。
GPSの赤いピンが地図に重なるように、現代にいる観客は舞台上の物語の中に時空を超えて入り込む瞬間、ドラマを享受する。それは時間軸や空間軸が変われば違う人生がありえたということ。「自分自身も狂言の家に生まれているので、そういう人生観を強く感じやすい状況にあった」という。
昨秋はパリの文化芸術イベント「ジャポニスム」で、父の野村万作(87)、長男の裕基(19)と格式の高い難曲「三番叟(さんばそう)」を舞った。
300年続く狂言の家で芸が受…