欧州伝統のスキーのジャンプ週間で6日(日本時間7日)、日本勢初の4戦全勝を果たし、日本勢21季ぶり2人目の総合優勝に輝いた小林陵侑(りょうゆう)(22)=土屋ホーム=は、小中学生時代から「金の卵」として期待されていた。将来有望なスポーツ選手を探して育てる地元岩手県の「タレント発掘・育成事業」を経て、才能が今季一気に開花した。
小林陵侑、ジャンプ週間総合優勝 4戦全勝は史上3人目
ついに出るか、「タレント発掘事業」出身の五輪代表
岩手県八幡平市出身。4人きょうだいの次男で、ジャンプ一家に育った。今回の遠征にも参加した平昌(ピョンチャン)五輪代表の潤志郎(27)は長男。小林陵は2007年の小学5年から中学3年まで、県の同事業に参加。地方自治体などが日本スポーツ振興センターなどの支援を受ける事業で、スピードスケートやレスリング、タックルの代わりに腰に下げたヒモを奪うタグラグビーなど様々なスポーツを経験しながら、どの競技に向いているかを見極める取り組みを経験した。
その後、昨年2月の平昌(ピョンチャン)五輪で、各地の同事業出身者としては夏冬の五輪を通じて初の日本代表になり、個人ノーマルヒルでは日本勢トップの7位入賞を果たした。今季はワールドカップ(W杯)で初勝利を挙げるなど11戦8勝。順調に成長してきた。
1992年アルベールビル冬季五輪複合団体金メダリストで、事業立ち上げから関わった岩手県スポーツ振興課の三ケ田礼一さん(51)は「岩手の田舎から世界で活躍する選手が出たことで、子どもたちが『やればできる』と思える。大リーガーの菊池雄星、大谷翔平も岩手出身で、夏冬のスポーツで勇気を与えてくれている」と語った。
98年長野冬季五輪ジャンプ団体金メダリストの原田雅彦・雪印メグミルク監督(50)は、72年札幌五輪で冬季五輪日本初の金メダルに輝いた笠谷幸生氏(75)と、21季前に日本勢初のジャンプ週間総合優勝に輝いた船木和喜(43)=フィット=に触れながら、「ジャンプ週間の価値は五輪とは違う。ゴルフとテニスで例えたら、ジャンプ週間の4連勝はグランドスラム(4大大会全制覇)達成の価値がある。あの笠谷も、あの船木もできなかった歴史を作った」とたたえた。(笠井正基)