宮崎県日南市の商店街から生まれた子どもアイドルグループが、市公認アイドルになった。ダンスグループ「ボニート×ボニート」。地元特産のカツオの模型を頭につけた小学生11人が、まちをPRしようと元気に活動している。
日南市は、一本釣りカツオ船の国内最大基地。グループ名の「ボニート」は英語で、カツオの意味だ。
グループ創設は2014年12月。宮崎市のダンス指導者の後藤マキさん(45)が、日南の商店街再生を目指して市民らが出資した「株式会社油津応援団」のメンバーと知り合ったことが、きっかけだった。「日南をアイドルで盛り上げてみよう」。応援団の後押しもあり、宮崎市で子どもたちにダンスを教えた経験を生かしてダンスグループを立ち上げようと決意した。
だが、当初集まったのは3人。練習場所は空き店舗が目立つシャッター通りの商店街で、ショーウィンドーを鏡代わりに歌やダンスの練習を始めた。アーケードに空いた穴から落ちる雨水でできた水たまりを避け、夜は投光器で周囲を照らした。
曲は後藤さんが日南のまちづくりを意識して作詞・作曲し、振り付けも担当した。例えば町のいまと再生の希望を描いた曲「じゅんびはいーかっ!!」。
♪ぼくらが生まれた町みなと町 シャッター街の続く街並み じいちゃんばあちゃんお茶をすすり 昔はにぎやかだった……とつぶやき
ラップ調の曲にのせてまちの風景を描き、再生の願いを込めてこう続けた。
♪神様おねがい少しだけ聞いて いつかこの町をたくさんの人でうめつくしたい イッツ ア エブリデイ 願いよとどけ いつか ほんとに!
「商店街でダンスを練習している子どもがいる」。評判が広まり、メンバーは少しずつ増えた。若者や子どもの行き来が途絶えがちだった商店街で小学生がのびやかに踊って歌う風景は、日南の名物になった。
メンバーは現在、年約80公演をこなし、東京のイベントなどにも参加して日南をPR。昨年秋には全国中継のラジオで紹介された。5月にはフジテレビ系列の番組のエンディング曲に採用され、日南の商店街や港を歩きながら歌う姿が、約3週間放映された。
商店街もプリン店など新しい店が入り、にぎわいをとり戻しつつある。
市は10月、「もうただのアイドルではない。市のまちづくりを担う子どもたちの後押しをしたい」と「ふるさとPRアイドル」に認定した。メンバーの小学6年の永野佑さん(12)は「これからもお客さんと一緒に楽しみ、日南のきれいな海やおいしい食べものをPRしたい」と喜んだ。
後藤さんは「まちの変化と一緒に育った子どもたちを認めてもらってありがたい。これからも外に出て日南をPRし、できれば移住希望者も一本釣りして人口を増やしたい」と笑った。(稲野慎)