国の重要文化財で松山市のシンボルでもある「道後温泉本館」で15日、保存修理工事が始まった。古いもので築120年を超す木造の本館を、大規模に修繕するのは初めて。2024年中の完了をめざす。期間中は2、3階の休憩室が使えなくなるが、入浴営業は部分的に続ける。
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本館を所有する松山市によると、道後温泉本館は1894(明治27)年から1924(大正13)年にかけて、4棟に分けて整備された木造の大衆浴場。古くは英語教師として松山に赴任した夏目漱石が入浴し、アニメ映画「千と千尋の神隠し」の湯屋のモデルとされる。年間約80万人が利用する人気の観光スポットだ。
ただ、老朽化が進み、大地震で倒壊するおそれがあった。温泉街では、全面休館して工事をすれば観光客が減ると不安がる声があったが、市は部分営業を続けて集客対策を強化すると理解を求め、工事を決めた。
総工費は約26億円を見込む。コンクリート製の浴槽と木造の建屋を鉄骨で連結したり、耐震壁を追加したりするほか、傷んだ部分も改修する。現在の入浴定員は150人(男性100人、女性50人)だが、工事が本格化する2月以降は60~80人に制限。完了後の新定員は140人(男性60人、女性80人)で女性を多くする。名物の2、3階の休憩室は工事完了まで使えない。
市は集客対策として14年以降、温泉にアートをからめた「道後オンセナート」などのアートイベントを毎年のように開催。17年には、本館や「椿(つばき)の湯」に続く第3の外湯として「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」を整備。今月7日には工事風景を一望できる足湯も完成した。着工後は、手塚治虫の人気キャラクター「火の鳥」で再生をPRする「道後REBORN(再生)プロジェクト」を始める。(藤家秀一、村上綾)