英議会で15日、英国の欧州連合(EU)からの離脱条件などを決めた協定案が大差で否決され、「合意なし離脱」のおそれが強まった。英国に拠点を置く日系企業は混乱を避けようと準備を進めているが、合意なし離脱となれば英経済への打撃は大きく、先行きへの警戒感が強まる。
英北部ニュートンエイクリフの日立製作所の鉄道車両工場。昨年12月中旬、英国内を走る高速鉄道車両などに配線や内装品の取り付け作業が進んでいた。車両の部品の大半は英国内から仕入れているが、一部はスペインやドイツから輸入する。
心配なのは、合意なし離脱で部品の到着が遅れないかだ。EU域内は無関税のため税関検査は不要だが、英国の離脱で国境での税関検査が復活して物流が混乱するおそれがある。英政府は今月初め、EUからの玄関口のドーバー港でトラック約100台を使い、大渋滞が起きた場合を想定した訓練を実施したほどだ。
日立では、EU側で部品を生産する調達先のメーカーが英国に拠点を持っていれば、一時的に英国で生産して納めてもらうなどの危機対応策を策定し、大きな影響は避けられる見通しという。
ただ日立首脳は「離脱の影響で英国の景気が悪化に向かえば大きな問題になる」と警戒する。先行きの不透明感から、鉄道運行事業者が車両の発注などの投資に慎重にならないか心配する。
ホンダは物流の混乱に備え、主力車種「シビック」を年約15万台生産する英国工場を4月に6日間休むと決めた。生産に必要な部品を事前手配して一時的に在庫を増やすことも検討している。
EU離脱の不透明さもあり、英国の昨年の新車販売は前年比6・8%減の236万台と5年ぶりの低水準に沈んだ。英ジャガー・ランドローバーは12日、欧州や中国での販売不振を受け従業員の約1割の約4500人を削減すると発表。英国での事業環境は厳しさを増している。
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