厚生労働省は18日、2019年度の公的年金の支給額を0・1%引き上げると発表した。物価や賃金が上昇したためで、15年度以来4年ぶりの増加となる。ただ、少子高齢化にあわせ年金の伸びを抑える「マクロ経済スライド」が実施されるため、物価が上がる中、実質的な年金水準は目減りする。
19年度の支給額は、国民年金の場合、満額で受け取る人は月67円増え6万5008円。厚生年金は、平均的な収入のサラリーマン(賞与を含む平均月収が約42万8千円)と専業主婦のモデル世帯(2人分)で、月227円増え22万1504円となる。4月分(支給は6月)から反映される。
年金額は物価や賃金の動きにあわせ毎年改定される。この日発表された昨年の消費者物価指数(生鮮食品を含む)は前年より1・0%上がった。一方、年金額の計算に用いる賃金上昇率は0・6%。こうした場合、上昇幅が小さい賃金にあわせて改定するルールになっている。
そこにマクロ経済スライドによる抑制がかかる。将来世代の年金が低下しすぎないよう自動的に年金額を圧縮する仕組みで、04年に導入された。ただ、デフレ時には発動しない規定があり、実際に発動したのは15年度の一度だけだった。18年度からは、デフレ時に抑制できない分を後で差し引く新ルールも導入。この結果、今回は18年度の未実施分(0・3%)とあわせて0・5%が抑制された。
4月からの国民年金の保険料は、月額1万6410円で、70円増える。国民年金に入る女性の産前産後の保険料を免除する制度が4月に始まるため、その財源とするためだ。20年度はさらに月130円増の1万6540円になる。
同省によると、年金額の改定には「毎月勤労統計」をめぐる不正問題の影響はないという。年金額の算定で使う賃金データには、日本年金機構の被保険者情報を使っており、同統計を使っていないとしている。