欧州連合(EU)のプライバシー規制「一般データ保護規則」(GDPR)の違反で米グーグルがフランスの規制当局から5千万ユーロ(約62億円)の制裁金を科された問題で、同社は23日、仏国務院に上訴すると明らかにした。個人情報の取得はグーグルのビジネスモデルの根幹にかかわるためとみられる。
グーグル広報は朝日新聞の取材に「我々は、GDPRに沿った同意手続きづくりに力を注いできた」とし、「欧州や域外の(ニュースやブログなどの)発行者たちや、独自コンテンツのクリエーターたち、テクノロジー企業に対して、この決定が与える影響を懸念している」と上訴の理由を説明した。
仏情報保護当局「情報処理及び自由に関する国家委員会」(CNIL)は21日、閲覧履歴などの収集でグーグルが利用者の同意を得る際、どんな情報をどの程度集めるか透明性に欠け、GDPRの基準を満たさないとして、5千万ユーロの制裁金を科すと発表した。
制裁金の額はグーグルにとって少額だ。グーグルの親会社であるアルファベットの昨年7~9月期の四半期決算だけで、売上高が337億4千万ドル(約3兆7千億円)、純利益は91億9200万ドル(約1兆円)にのぼるからだ。
ただ、CNILが指摘した「不透明性」はグーグルにとっては重い。CNILはグーグルが利用者から同意を得る際、重要な情報を「過度に、いくつかの文書にまたがってばらまいている」と問題視。利用者は重要な情報を探すため5、6回もクリックを重ねないといけないと指摘した。
グーグルは検索サービスや閲覧ソフトを無料で提供する一方、同意を得てネット利用情報を取得し、利用者にあった広告を表示して企業から収入を得ている。同意がとりにくくなればビジネスモデルそのものに大きな影響が出る。それだけにグーグルは仏当局の決定に対し、上訴を決めたものとみられる。
すでにグーグルに対しては米議会から「大半の消費者には、何に同意しているのか理解できていない」といった不満が出ている。米議会は規制強化を検討しており、グーグルは今後、欧州当局だけでなく、多方面から対応を迫られる可能性がある。(サンフランシスコ=尾形聡彦)