2018年4月にテヘランのスタジアムであったペルセポリスの試合に、男装して入場したザフラ・ホシュナバズさん(左)とレイリ・ガンバリさん(ガンバリさん提供)
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サッカー好きの女性に、スタジアムでの観戦を禁じているイスラム教国のイラン。そのルールに疑問を抱いた会計士の女性はある「裏技」を使い、出入り口に立つ警備員の監視をかいくぐって入場し、ピッチの選手に声援を送ってきた。イランで、男女を問わず爆発的な支持を集めた女性の挑戦。頭をひねった「裏技」とはどんなものなのだろうか。
「サッカー見ず死んだら後悔」男装で目指したスタジアム
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この女性は首都テヘランに住む会計士のザフラ・ホシュナバズさん(26)。幼い頃から家族ぐるみのサッカーファンで、高校時代には自らも女子サッカー部に所属していたほど。とくに、地元強豪チームの「ペルセポリス」の熱烈なサポーターだった。
いつかはスタジアムで選手を応援したいと考えていたが、イランはイスラム法学者が統治しており、男女が公共の場所で一緒になるのは好ましくないという考えが根強い。スタジアムでの女性サポーターの観戦も慣習で禁じられている。保守派の政府高官は、「男性フーリガンの暴行や、痴漢行為から女性を守るため」と説明しており、スタジアムの警備員は、暴動や危険物に目を光らせるだけでなく、女性の入場者を見抜くことも大事な仕事とされている。
2018年4月にテヘランのスタジアムに男装して入場し、ペルセポリスの試合を観戦するザフラ・ホシュナバズさん(中央)=本人提供
そんな男性の「聖域」にホシュナバズさんが最初に挑んだのは2017年12月だ。厳しい警備を突破するために使った作戦は「男装」だった。友人たちと検討を重ね、準備したのは付けひげと胸の膨らみを隠す布。化粧で眉も濃くして監視をかいくぐり、初の入場を果たした。そこで体感したのは、「スタジアムは、言われていたような危険な場所ではなく、サッカー好きの人たちが集う場所だった。男性たちは、みんな(女性の入場を)普通のことのように受け入れてくれた」という現実だった。
■男性サポーター…