がんについて全く知らなかった男性が、親族の死を機に初めての映画「がんになる前に知っておくこと」を作った。2月2日から東京都内で公開される。ナビゲーター役の俳優が患者やがんの専門家計15人に話を聴き、理解を深めていくドキュメンタリー。「まずは知ることから始めてほしい」と話す、俳優が行き着いた思いとは?
手がけたのは映像制作会社長の上原拓治さん(45)。2016年3月、義理の妹が41歳で子宮頸(けい)がんで亡くなったという突然の知らせにぼうぜんとした。がんはその1年前にわかっていたが、遠方に住んでいたこともあり、深刻には考えていなかった。「この若さでこんなことになるなんて」。自分も無関係ではないと感じた。
ライブ撮影やミュージックビデオ作りをしてきた上原さんは11年、映画制作を目標に独立していた。2人に1人が生涯のうちにがんになる時代。「自分のようにがんを全く知らない人向けの作品を作ろう」と決めた。
患者向けの本を何冊も買い、インターネットを検索。闘病ブログを読んだり患者に密着したドキュメンタリー映像を見たりした。がんはなぜできるか。最新の治療法は。知識が増えても不安はなくならなかった。
ドキュメンタリー映画で知られる旧知の三宅流(ながる)さん(44)に監督を依頼。話を聴く人探しから始めたが、どこへ行けばいいかもわからない。つてもなく病院に電話をしても医師に取り次いでもらえない日々が続いた。患者支援をするNPO法人に患者を紹介してもらい、1年越しでようやく撮影が始まった。
■15人から、のべ50時…