原爆投下前の広島で撮られた白黒写真をカラー化したものを、地図や、現実の風景に画像を重ねるAR(拡張現実)で表示するアプリが完成した。東京大大学院の渡邉英徳教授や広島の高校生らが手がけた。1日午後2時からダウンロードできる。
アプリ「記憶の解凍」を開くと、平和記念公園(広島市中区)の衛星写真が現れる。カラー化されたかつての街並みや人々の写真がちりばめられ、タップすると写真を大きく表示でき、持ち主のコメントなどを読むこともできる。
衛星写真から、原爆で壊滅した旧中島地区(現・平和記念公園周辺)の地図に切り替え、詳細な撮影場所を確かめられる。写真館、理髪店など、実際にあった店舗名も記されている。
AR表示を選ぶとカメラ画面に切り替わり、起動させれば、現在地から撮影場所までの距離が表示される。
カラー化した写真は2017年秋以降、広島女学院高2年の庭田杏珠さんらが、写真の持ち主である被爆者らに聞き取り、渡邉教授と一緒にAI(人工知能)技術と手作業で色づけしてきた。1日現在アプリには20枚以上のカラー写真がアップされており、今後追加していく。
渡邉教授は「遠い戦前の世界を、私たちの世界と地続きのものと感じてもらえる」。庭田さんも「アプリを使いながら平和記念公園を歩き、かつて4400人の暮らした繁華街・中島地区があったということを実感してほしい」と話している。
アプリは、「App Store」と「Google Play」から無料でダウンロードできる。QRコードからもアクセスできる。(土屋香乃子)