トランプ米政権が中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を表明すると、ロシアのプーチン大統領は2日、条約の履行停止をすぐさま宣言し、新型ミサイルを開発する対抗手段を承認した。米国もアジアや欧州で中距離ミサイルを新たに配備する構えだが、その候補地になりかねない日本は大国の軍拡競争に巻き込まれる可能性がある。(モスクワ=喜田尚、ワシントン=園田耕司、編集委員・佐藤武嗣)
「我々も米国と同じように(条約の義務履行を)停止する」
プーチン氏は2日、ラブロフ外相、ショイグ国防相を呼び出した協議の席で「我々の回答は対称的なものでなければならない」と述べた。
協議の様子は、同日正午の国営テレビで国民向けに放送された。プーチン氏は、INF全廃条約が禁止する地上配備型中距離ミサイルの開発や、条約対象外の海上発射型ミサイルを地上配備に転用する研究などショイグ氏が提案する対抗手段を承認。一方で、実際に配備するかは米国の出方次第との考えも示した。
米国の離脱通告が避けられないとみたロシアは、対抗策の準備を着々と進めてきた。ショイグ氏が提案した海上発射型ミサイルの地上への転用もその一つだ。
条約が対象を地上配備の中距離ミサイルに限ったのは、当時ソ連が海上発射や航空機搭載の中距離ミサイルを持ってなかったからだ。だが、ロシアは今、中距離の射程があり、音速の5倍以上で飛ぶ海上・空中発射型の極超音速(ハイパーソニック)兵器を多数保持する。プーチン氏は1月、これらの兵器を地上配備に転用することは「さして難しいことではない」と明言していた。
だが、米国も条約からの離脱を…