広島県警広島中央署(広島市中区)が保管していた特殊詐欺事件の証拠品8572万円が2017年に盗まれた事件で、県警が幹部らから現金を集め、補塡(ほてん)する準備を始めていることが5日、わかった。詐欺事件の裁判が終われば証拠品の現金は被害者たちに戻す必要があるが、盗難発覚から1年9カ月、捜査は難航している。
県警関係者によると、県警本部幹部や各警察署の署長らを対象に階級や役職に応じて金額を決め、有志からカンパのような形で集めることを検討している。この春退職予定の幹部の中には、既に県警に現金を預けた人もいるという。
県警は、生前贈与をかたる詐欺事件の容疑者グループから押収した証拠品約9千万円を中央署の金庫に保管。ところが、このうち8572万円が盗まれていたことが17年5月に発覚した。県警は内部犯行の可能性が高いとみて捜査を続けてきたが、有力な証拠は見つかっていない。
一方、詐欺事件の公判が広島地裁で進んでおり、もし被告たちの有罪が確定すれば、押収した現金は被害者たちに返す必要がある。県予算から補塡する方法もあるが納税者の理解を得るのは容易ではないとみられ、県警が対応を迫られていた。