消費者庁の地方拠点「消費者行政新未来創造オフィス」(徳島オフィス)が徳島市に開設されてから1年半が過ぎた。「消費者行政の底上げにつながっている」と評価する声がある一方で、中央省庁が地方に全面移転するハードルの高さも浮かび上がる。
徳島市中心部にある徳島県庁。淡路島や紀伊半島が一望できる10階の北側約800平方メートルのフロアが、徳島オフィスの執務室だ。県産材を使った丸テーブルやカウンター席がゆったりと並び、一角の「立ち会議」のスペースには、東京の本庁と日常的な打ち合わせに使われるテレビ会議システムがある。
オフィスでは、消費者庁所管の独立行政法人・国民生活センターの職員を含めて五十数人が働いている。うち16人が東京から異動。その他は、研修員などとして近隣県や県内市町村から派遣された職員、調査員として派遣された企業社員、客員研究員の大学教員らだ。
2017年7月24日の開設以降、オフィスが力を注いできたのが若者への消費者教育だ。
徳島県や県教委の協力を得て、身近な消費者トラブルなどをクイズ形式で学ぶ教材「社会への扉」(同庁作成)を使った授業を県内すべての高校など56校で実施。成人年齢の18歳引き下げの動きとも重なり、この「徳島モデル」の取り組みが19年度から複数県で行われることになった。徳島モデルの全国展開を目指してきた同オフィスの日下部英紀・前参事官は「徳島県の協力を得て、県内を実証フィールドにできたことが大きい」。
安倍晋三首相は昨年9月にオフィスを訪れ、「地方拠点のなかった消費者庁が徳島でフィールドワークをしっかりして、分析しながら成果を出し、全国に展開している。非常にいい流れができている」と話した。
また、徳島県内の各自治体への波及効果もあった。オフィス開設に合わせ、全24市町村に公益通報窓口ができ、契約などでトラブルに巻き込まれないよう高齢者の見守りネットワークづくりが進んでいる。昨年10月に就任後初めてオフィスを視察した宮腰光寛消費者相は「全国で最も積極的に見守りネットワークを構築している」と評価した。
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