すべての人に結婚の自由を――。同性婚ができないことの違憲性を問う日本で初めての訴訟が14日、札幌、東京、名古屋、大阪の4地裁に一斉に提起される。世界では同性カップルの法的承認が進むが、政府・自民党内に同性婚を認める機運はない。弁護団は「訴訟を通してムーブメントを起こしたい」と世論喚起にも期待する。
特権ではなく平等を 偏見残る社会「変わるきっかけに」
提訴するのは、8都道府県の20~50代の同性カップル13組。弁護団は、国が同性同士の結婚を認めないのは憲法が保障する結婚の自由や法の下の平等に反し、違憲だと主張。国会が民法改正などの立法措置を怠ったとして、国家賠償法に基づき、1人あたり100万円の損害賠償を請求する。
東京訴訟の共同代表、上杉崇子弁護士は「同性婚を認めない国は、同性カップルに『社会が承認しない関係性』との烙印(らくいん)を押している。同性を愛する人々の尊厳を回復したい」と言う。
原告に加わる西川麻実(あさみ)さんと小野春さん=東京都世田谷区=は12日、先週出した婚姻届が不受理になったと連絡を受けた。理由は「不適法」だった。
西川さんは欧米で同性婚を求める裁判が相次ぎ、法が変わっていく様を見て、いつか訴えを起こしたいと考えてきた。「長い間パートナーシップを築き、地域に根づいて暮らし、尊厳回復の願いを持っている人々が、この国には大勢いる」
2人は40代で、14年連れ添ってきた。お互いに異性と結婚していた時の子がいる。1人は巣立ち、いまは高校生の子2人と4人で暮らす。どこにでもある家族の姿だが、結婚できず共同親権もない。地域や学校、職場でどう説明するか。両親が同性カップルと分かれば、わが子が偏見にさらされないか。「張りつめた思い」の中で生活してきた。
小野さんは2016年に乳がんの手術を受けた。パートナーが告知に立ち会えるか、手術の同意書にサインできるか、不安がつきまとった。遺言がなければ相続できず、自分の死後に実子をパートナーに育ててもらえる確証もない。男性と結婚していた時は無自覚だったが、婚姻制度には様々な生活保障のパッケージがひも付けられ、異性カップルは幾重にも守られている。死と直面し、その落差を身をもって知った。
小野さんは性的少数者の家族が緩やかにつながる「にじいろかぞく」の代表でもある。「子育てしているLGBTは都会だけでなく地方にもいる。すでに多様な家族が存在し、そこで育つ子どもがいるという現実に目を向けてほしい」と話す。
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