障害者が鉄道やバスなどを使う際、毎回手帳を示さなくても割引を受けられるようにできないか――。2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、国土交通省は割引手続きの簡素化を全国の交通各社に求め始めた。ICカードを改札でかざすだけで割引運賃で乗車できる仕組みなどを目指す。
公共交通機関の障害者割引について国の明確なルールはなく、障害の有無の確認方法や割引率は各社に任されている。現状、割引を利用するたびに障害者手帳の提示を求める公共交通が多い。
例えば、JR東日本の交通系ICカード「Suica(スイカ)」では、降車駅の窓口で手帳を提示しなければ割引は受けられない。関東の私鉄・バス事業者でつくる「PASMO(パスモ)」も同様の運用だ。
こうした状況を受け、東京五輪・パラに向けて障害者の快適な移動などを検討する国の会議で昨年12月に、バリアフリー化の促進案などに加え、割引手続きの簡素化を求める意見が障害者の委員から出された。
国交省が調べたところ、手帳の提示が毎回必要であるかのような記述が国の告示や通知、通達にあることが判明。バス事業者が運送約款の見本にしている国交省の告示「標準運送約款」では、運賃割引の確認方法について「手帳を呈示(ていじ)し」とあった。国交省はこの表記を削除し、交通系ICカードなどでも確認できることを明記する。船舶事業者や障害者手帳を交付している自治体への通知でも同様の記述があったといい、順次改めていく方針だ。
これと並行し、1月下旬からは鉄道、自動車、航空、船舶の各社に障害者手帳の確認方法の見直しを促す通知を始めた。
すでに、関西などの私鉄・バス64社でつくるスルッとKANSAI協議会では、障害者と介護者用のプリペイド式ICカードを導入。事前に登録をしておけば、このカードを自動改札にかざすだけで割引運賃で利用できる。適切な利用のため、1年ごとの継続利用の確認も行っている。全日空や日本航空でも、事前に登録した人についてはチェックイン時の障害者の確認は省略しているという。国交省は通知でこうした事例を紹介しながら、各社に対応を促していく。(贄川俊)