昨年10月、韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金に元徴用工4人に1人あたり1億ウォン(約1千万円)の賠償を命じた判決をめぐり、原告側の弁護士が14日、ソウルで会見し、同社が協議に応じなければ、差し押さえた韓国内の同社資産を今月中に売却すると表明した。日本政府は「日本企業に実害が出れば対抗措置をとる」と牽制(けんせい)しており、日韓関係がさらに悪化する可能性がある。
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原告側の弁護士は、90代の原告が早期に賠償を受けることを望んでいることや、判決確定から4カ月が過ぎても新日鉄住金が賠償に応じる意思を示していないことなどを説明。15日に申し入れている協議に同社が応じなければ、資産売却の手続きに入るとし、「正当な判決の履行であり、国際法違反という日本政府の指摘は妥当ではない」と主張した。
また、韓国のソウル高裁などが機械メーカー・不二越に元女子勤労挺身(ていしん)隊員ら計33人に1人最高で1億ウォンの支払いを命じた判決をめぐっても、原告側の弁護士らが14日、同社が協議に応じなければ、韓国内資産の差し押さえをすると明らかにした。判決は確定していないが、仮執行手続きが可能だという。
韓国大法院が三菱重工業に元徴用工や元女子勤労挺身隊員への損害賠償を命じた判決の原告代理人も1月、同社が2月末までに交渉に応じない場合は韓国内の資産の差し押さえを申請すると表明している。(ソウル=武田肇)