内戦が続くシリアの北部アレッポ県で、国連の人道支援活動を率いる日本人女性がいる。長引く戦闘による地域の荒廃と大量の避難民、国際社会の「支援疲れ」が重なるなか、援助を得る人々と出す国々の双方を納得させる妙案はあるのか。そのヒントは過去の教訓に隠されていた。
国際社会に「シリア援助疲れ」 人道支援の最前線を見る
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女性は昨年9月に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のアレッポ事務所長に就任した高嶋由美子さん(48)。一帯で活動する世界保健機関(WHO)や国連児童基金(ユニセフ)などの国連機関の間の調整や国連職員の安全管理も担っている。
これまでに、スーダンや東ティモール、タイ、カンボジア、ミャンマー、アフガニスタン、ケニア、ウガンダなどで勤務してきた。現在のアレッポ事務所は、シリア北部のアレッポ県全域を管轄する。県都アレッポはシリア第2の都市で、反体制派による占拠を経て、16年末にアサド政権が奪還したが、県内には反体制派の支配地域も残り、緊張が続く。避難していた住民たちは戻りつつあるが、住居やインフラは壊れたままだ。郊外の村々では人道支援がなければ、日常生活を送ることも難しい。
同事務所の資料によると、UNHCRはアレッポ県内で、他の場所から避難してきた人たち約99万人、かつて他の場所に避難し、アレッポ県に戻ってきた元住民たち約16万人を支援している。昨年12月、アレッポを訪ね、高嶋さんにアレッポ県の実情や活動内容を聞いた。
支援スタッフも難民
――アレッポ事務所長に就任して4カ月がたちました。アレッポで感じることは?
支援活動に同じものはありませんが、アレッポでの特徴は、約50人のシリア人スタッフの大部分が、自らも国内で避難したり、海外で難民になったりした経験があることです。支援を受ける側の人について言えば、多くの人が「なぜこんなことになってしまったのか。自分がこんな目に遭うとは思わなかった。もう二度とこんな思いはしたくない」という気持ちを強く持っています。ただ、困難な生活でも、人生を楽しもうという前向きな人も多い。そういう所に魅力を感じます。
――UNHCRの仕事を教えて…