「新幹線大爆破」「人間の証明」「敦煌」など、数々の大作映画を演出してきた映画監督の佐藤純彌(さとう・じゅんや)さんが9日午後11時、多臓器不全のため東京都内の自宅で死去したことがわかった。86歳だった。葬儀は親族で営んだ。喪主は長男で日本テレビディレクターの東弥(とうや)さん。
東京大文学部を卒業して東映東京撮影所に入社。1963年、軍隊組織の非道をえぐった「陸軍残虐物語」で監督デビューし、ブルーリボン賞新人賞を受けた。その後は「組織暴力」「博徒斬り込み隊」「やくざと抗争」「ゴルゴ13」など、男臭い東映娯楽作を多く手がけてきた。
75年、故高倉健主演のサスペンス大作「新幹線大爆破」を発表。フランスなど海外でも高い支持を得た。同じく高倉主演の「君よ憤怒の河を渉(わた)れ」(76年)は中国で圧倒的人気で迎えられた。角川春樹プロデューサーと組み、77、78年には森村誠一原作の「人間の証明」「野性の証明」とヒット作を連続して監督し、角川映画の躍進に貢献した。
80年代以降、日中合作の「未完の対局」を始め「空海」「植村直己物語」「敦煌」など超大作を任されることがさらに増えた。多くの人が関わる超大作の製作現場をうまくさばき、破綻(はたん)せずにまとめ上げる手腕にたけていた。05年には戦艦大和の乗組員と家族を描いた「男たちの大和/YAMATO」をヒットに導いた。
東映によると、3年前に消化器系の疾患で医師から入院を勧められたが、拒否して自宅療養を続けていたという。10年の時代劇「桜田門外ノ変」が最後の監督作になった。(編集委員・石飛徳樹)
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俳優の西田敏行さんのコメント
佐藤純彌監督が逝去されたと聞き、1985年に撮影した「植村直己物語」のことが思い出されました。ことに、北極での撮影ではスタッフ・キャストの命を守り、作品の成功に導かねばというプレッシャーと戦いながら、皆の前では穏やかな表情で監督指揮をしていた姿です。人望があり、学者肌の映画監督でした。ご冥福を祈ります。