米ボーイング社と経済産業省が1月、環境負荷が少なく静かな電動航空機の開発に向けた技術協力で合意した。「航空機業界の巨人」といわれるボーイングが目をつけた日本の技術は、電動旅客機実現の鍵を握るとみる政府関係者もいる。
「空飛ぶクルマ」に現実味 ドローン普及、技術進化
eVTOLの先を見据え技術協力
1月15日午後。東京・霞が関の経済産業省の一室に、20人ほどが集っていた。ボーイングが電動航空機開発に役立つと見込んだ日本の企業や組織の関係者だ。部屋に入ってきたボーイングのグレッグ・ハイスロップCTO(最高技術責任者)は次々と握手を求めた。
電動航空機は、二酸化炭素や窒素酸化物などの排出が少なく、静かに飛行できるとして期待されている。現在は、ドローンを大きくしたような電動垂直離着陸機(eVTOL(イーブイトール))が実用化寸前だ。4人程度の乗客で、主に「空飛ぶタクシー」としての利用が想定されている。
一方、多くの乗客を運べる電動旅客機の開発は、既存のジェット旅客機のエンジンの一部を電動モーターに置き換えた実験機が来年にも初飛行を迎えるという段階。実用化はまだ先だ。
今回のボーイングと経産省の技術協力合意について、政府関係者は「中型、さらには大型の電動航空機の実現をも視野にいれたものだ」と話す。
航空機の電動化には「軽量化」と「信頼性」がキーワードになる。ぎりぎりまで軽量化しつつ、安全確保のためにより高い信頼性を確保しなくてはならない。だが、信頼性を高めるにはサイズに余裕を持たせたり、材料を多く使ったりすることも多く、重量がかさむ。軽量化と信頼性の両立は容易ではない。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)次世代航空イノベーションハブの西沢啓さんは「モーターでは新しい電磁材料、電池ではリチウムイオン電池に代わる新しい組成の電池、というように、技術や材料のレベルからの変革が鍵になる」と指摘する。
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