高齢者や外国人、障害者、ひとり親家庭、性的少数者らに立ちはだかる社会の様々なバリアー(障壁)を打ち破る陽気なかあちゃんを描いた映画を、愛知県東浦町の市民団体が作った。「寛容性や多様性など、違いを認め合うことの大切さ」がテーマだ。24日に町内で、初の上映会を開く。
映画は「バリアフリーかあちゃん!!」で、「ひがしうら映画プロジェクト」が制作した。代表で日本福祉大職員の村松愛子さん(48)がプロデューサー、愛知淑徳大非常勤講師で映画制作による地域づくりを研究する石丸みどりさん(59)が監督・脚本を担当した。石丸ゼミの学生9人も、スタッフや出演者で参加した。
主人公の朝子は、夫と小学生の男の子との3人暮らし。アイドルのコンサートで立ち往生する高齢者に心ない言葉を浴びせる若者に声をかけたり、言葉が通じずに買い物に困る外国人を身ぶり手ぶりで通訳したりして、「バリアフリーかあちゃん」と呼ばれている。だが、自らも人には言えない「心のバリアー」があった。朝子自身がバリアーを越えられるか――という内容だ。
石丸さんは、岐阜県恵那市や愛知県高浜市などで地域映画の制作に携わった。「社会のバリアーや自分自身の中のバリアーを乗り越えていく映画。子どものために、すべてを受け入れる母の姿も描いた」。自らもひとり親として2人の子を育てた経験があり、「映画を見た人に、いろんな問題に気付いてほしい」。
東浦町出身の村松さんは「町の人たちはおおらかで、外国人にも住みやすいと言ってもらえる。町を舞台に、寛容性や多様性がテーマの映画で全国発信したい」と話す。
映画には町民ら約200人が出演。障害がある人たちも多く参加し、昨夏に撮影された。オーディションでは、ひきこもりだったという30代の女性が「(映画で)自分も変われるかも知れない」と応募の理由を説明。石丸さんは「その言葉がすごくうれしかった」という。
石丸ゼミ生で愛知淑徳大3年の打田雅仁さん(21)は、日本語が分からない日系ブラジル人役で出演。「エキストラのブラジル人にポルトガル語を教えてもらいながらの撮影だった」。父親はドイツ人で、外国人の受け入れは身近なテーマだ。
カメラマンのアシスタントをしたゼミ生の石田栞(しおり)さん(20)は「私の回りにLGBTなどの性的少数者はいないと思っていたが、悩んでいる人がいるのかも」と思えるようになった。
映画は43分。ユーチューブ(
https://www.youtube.com/watch?v=Re0_d0c8ceI)
で予告編を見られる。制作費約200万円は町の補助金24万円のほか、企業協賛やクラウドファンディングなどで集めた。
初の上映会は2月24日午後6時半から、東浦町石浜の町文化センターで。入場無料。問い合わせは、ひがしうら映画プロジェクト(higashiura.eiga2017@gmail.com)へ。(豊平森)