永井荷風から、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、大江健三郎――。多くの作家と交流があった日本文学者ドナルド・キーンさんは、朝日新聞の連載「声の残り 私の日本文壇交友録」(1992年4~7月掲載)に、個性あふれる作家の素顔を書き記していた。
親友は三島由紀夫 自決2日後、キーンさんに届いた手紙
【特集】ドナルド・キーンさんの生涯と言葉
ドナルド・キーンさんの文壇交友録
○永井荷風(1879~1959)
「まことに風采(ふうさい)の上がらぬ人物だった。(中略)しかし彼の話すのを聴いているうちに、そうしたマイナスの印象なぞ、いつの間にか、どこかへ、すっ飛んで行ってしまった。彼の話す日本語は、私がかつて聴いたことがない位、美しかったのだ」
○谷崎潤一郎(1886~1965)
「例えば私の頭に、今も残っている彼の言葉が、1つある。それは、京都に住んでいた間に、男の友達は、1人も作らなかった、という言葉だ」
「谷崎の家についての私のもう1…