作家の村上春樹さん(70)が23日、パリの国立コリーヌ劇場で開かれた読者との交流会で、質疑を通して約650人の参加者に、小説を書く意義などについて存分に語った。冒頭、英語で短くあいさつしたほかは、通訳を介して日本語で話した。主なやりとりは以下の通り。
村上春樹さん「理想信じる力を若い世代へ」パリで交流会
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「僕が小説を書いて40年になります。長い歳月で、当時は携帯電話もなかったし、パソコンもなかった。貨幣もなくて、貝殻を使っていました」
「というのはウソで、とにかく万年筆で字を書いていました。僕は80年代半ばにギリシャとイタリアで分厚いノートに『ノルウェイの森』を書いた。カフェの机で書いていたのでコーヒーやスパゲティのしみがついている。『海辺のカフカ』は前半はハワイのカウアイ島、残りは東京で書いた。その時はアップルコンピュータを使っていたけど、それでもそれぞれの作品にはそれを書いた場所の記憶がソースのシミのように染みついています」
――村上さんの小説の中で、どうしても手の届かない、というテーマがよく表れる。
「すべてのものは移り変わる。…