「目に見えない障害」といわれる聴覚障害。国内には補聴器を使う人が200万人ほどいるとされる。近年はおしゃれなものが増え、若者を中心に、補聴器を見せることに抵抗が少なくなりつつある。でも、思わぬトラブルに巻き込まれることも。
岐阜県の小林ののかさん(19)は生まれつき、ほとんど耳が聞こえない。寝る時以外は両耳に補聴器を着けているが、街中の雑踏や騒がしい屋内では聞き取ることが難しい。そんな時は、相手の口の動きを読み取りながら会話している。
昨春に愛知県の大学に進学し、電車で通うようになって間もなくの頃。満員電車の中で立っていた小林さんは、駅に停車した時に突然、後ろから耳を強く引っ張られた。
驚いて振り向くと、顔を紅潮させた中年男性が目の前にいた。雑音が多い満員電車内で、声はほとんど聞き取れなかったが、口の動きと表情から、「音楽聴いてんじゃねえよ!」と怒鳴られていることはわかった。
男性は電車を降りていったが、小林さんは胸の動悸(どうき)が止まらなかった。引っ張られた補聴器は、マイク部分が耳から外れていた。
補聴器のマイク部分は青色と水…